データサイエンティストのスキルを証明する資格は、近年急速に増加しています。クラウドベンダーが提供する資格から、統計検定のような専門資格まで、種類も難易度も様々。「どの資格から始めればいいのか」「自分のレベルに合った資格が分からない」という声も多く聞かれます。
本記事では、データサイエンティストに関連する資格を初級・中級・上級の3つのレベルに分類し、それぞれの特徴と難易度を詳しく解説します。各資格の試験内容や必要なスキル、実務での活用シーンまで、詳細に比較していきましょう。
自分のキャリアゴールや現在のスキルレベルに合わせて、最適な資格を選択する参考にしてください。
初級レベル
【初級レベル】では、プログラミングや統計の経験が少ない方でも挑戦できる資格を紹介します。
統計検定3級
統計学の基礎的な知識を証明する入門レベルの資格です。記述統計や確率の基礎概念を中心に、ビジネスで必要となる統計的な考え方を理解しているかを評価します。データ分析に興味のある方、ビジネスにおいて基礎的なデータ活用力を示したい方に最適です。
高校1年生程度の数学の知識があれば取り組める内容で、基本的な統計量の理解と計算力を問う試験となっています。入門レベルの統計検定として、初級レベルに分類されます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | 一般財団法人 統計質保証推進協会 |
受験料 | 4,000円 |
試験形式・時間 | CBT方式、試験時間60分 |
受験要件 | なし |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 70点以上 |
学習時間の目安 | 30-50時間 |
必要な前提知識 | 高校1年生程度の数学 |
主な出題範囲 | ・データの要約 ・確率の基礎 ・代表値と散布度 ・相関と回帰 |
出題形式 | マークシート式、四者択一 |
実務での活用シーン | ・基本的なデータ集計 ・簡単な統計分析 ・データの読み取りと解釈 |
企業での評価ポイント | ・統計的思考の基礎力 ・データリテラシーの証明 ・分析スキルの入門レベルの保証 |
公式サイト |
Google Data Analytics Professional Certificate
Googleが提供する実践的なデータ分析スキルの習得を証明する資格です。R、SQLなどの基本的なツールの使用方法から、データの収集・分析・可視化まで、実務で必要とされる幅広いスキルを評価します。データ分析職への転職を目指す方や、ビジネスデータの分析スキルを身につけたい方に適しています。
前提知識がほとんど不要で、オンライン学習を通じて基礎から学べる構成になっています。実践的な内容ながら、段階的に学習を進められることから、初級レベルに位置づけられます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | |
受験料 | $39/月(Courseraの受講料) |
試験形式・時間 | オンライン、自己ペースで学習(完了まで約6ヶ月) |
受験要件 | なし |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 各コース80%以上 |
学習時間の目安 | 週10時間で約6ヶ月 |
必要な前提知識 | 基本的なPC操作スキル |
主な出題範囲 | ・データ分析の基礎 ・R言語とSQL ・データクリーニング ・データ可視化 ・分析プロジェクトの実践 |
出題形式 | ・選択式問題 ・実践的な課題 ・最終プロジェクト |
実務での活用シーン | ・ビジネスデータの分析 ・データに基づく意思決定 ・レポート作成と可視化 |
企業での評価ポイント | ・実践的なデータ分析スキル ・Googleの認定資格としての信頼性 ・即戦力としての評価 |
公式サイト |
中級レベル
【中級レベル】では、基礎的なスキルを持つ方向けの実践的な資格を紹介します。
G検定
ディープラーニングの基礎知識を有することを証明する資格です。AI・機械学習の基本的な概念から、ディープラーニングの理論と応用まで、幅広い知識を評価します。システムの開発者だけでなく、AIプロジェクトの企画・管理者やベンダーとのやり取りが必要なビジネスサイドの方にも適した資格です。
実装スキルは問われず、基礎理論とビジネス活用の理解を中心に評価されるため、中級レベルに位置づけられます。ただし、AIの基礎知識と数学的な理解が必要なため、一定の学習時間は必要です。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | 一般社団法人 日本ディープラーニング協会 |
受験料 | 13,200円(税込) |
試験形式・時間 | オンライン、120分 |
受験要件 | なし |
合格率 | 74.4%(最新の2024年の試験結果より) |
合格ボーダー | 非公表 |
学習時間の目安 | 40-60時間 |
必要な前提知識 | ・基礎的な数学知識 ・プログラミングの基礎 |
主な出題範囲 | ・人工知能の基礎 ・機械学習の基礎 ・ディープラーニングの基礎 ・AIの社会実装 |
出題形式 | 選択式 |
実務での活用シーン | ・AIプロジェクトの企画 ・AI導入の検討 ・開発者とのコミュニケーション |
企業での評価ポイント | ・AI/DLの基礎知識 ・最新技術への理解 ・AIプロジェクトマネジメント能力 |
公式サイト |
学習時間の確保が難しい方へ
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Microsoft Azure Data Scientist Associate
Microsoft Azureのプラットフォームを使用してデータサイエンスソリューションを実装・運用する能力を証明する資格です。機械学が習モデルの開発から展開まで、クラウド環境でのデータサイエンスプロジェクトを遂行するスキルを評価します。クラウド環境でのデータサイエンス実務を目指す方に適しています。
Pythonによる実装力とAzureの基礎知識、機械学習の基本的な理解が必要です。実践的な問題解決力が問われることから、中級レベルに分類されます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | Microsoft |
受験料 | $165 |
試験形式・時間 | オンライン/テストセンター、180分 |
受験要件 | なし(Azure基礎知識推奨) |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 700点以上/1000点満点 |
学習時間の目安 | 80-120時間 |
必要な前提知識 | ・Python ・機械学習の基礎 ・Azure基礎知識 |
主な出題範囲 | ・データの準備と可視化 ・機械学習モデルの開発 ・モデルの展開と監視 |
出題形式 | ・選択式 ・ケーススタディ ・実践形式の問題 |
実務での活用シーン | ・Azure上での機械学習モデル開発 ・データパイプラインの構築 ・MLOpsの実践 |
企業での評価ポイント | ・クラウドでのML開発スキル ・実践的な開発能力 ・エンタープライズでの即戦力性 |
公式サイト |
統計検定2級
統計検定3級より一段階上の、実践的な統計力を証明する資格です。記述統計だけでなく推測統計の知識も問われ、実務でのデータ分析に必要な統計的な考え方を身につけているかを評価します。データサイエンスの実務で必要となる統計スキルの証明を目指す方に適しています。
推測統計や多変量解析など、より専門的な統計手法の理解が必要となり、実践的な応用力も問われます。このため、中級レベルに位置づけられます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | 一般財団法人 統計質保証推進協会 |
受験料 | 6,000円 |
試験形式・時間 | CBT方式、試験時間90分 |
受験要件 | なし |
合格率 | 非公表だが、過去の受験データでは40~50%程度。 |
合格ボーダー | 非公表だが、正答率60~70%程度。 |
学習時間の目安 | 100-150時間 |
必要な前提知識 | ・統計検定3級レベルの知識 ・高校数学(数学I・A) |
主な出題範囲 | ・確率分布 ・推定と検定 ・回帰分析 ・多変量解析の基礎 |
出題形式 | 四者択一の選択式 |
実務での活用シーン | ・データ分析の設計 ・統計的仮説検定 ・分析レポートの作成 |
企業での評価ポイント | ・実践的な統計解析力 ・データに基づく意思決定能力 ・分析の妥当性評価能力 |
公式サイト |
Google Cloud Professional Data Engineer
Google Cloudプラットフォーム上でのデータ処理システムの設計・構築・運用能力を証明する資格です。ビッグデータ処理から機械学習の実装まで、データエンジニアリングの実践力を評価します。クラウド環境でのデータ基盤構築やMLOps構築を目指す方に最適です。
クラウドインフラの理解、プログラミングスキル、システム設計の知識が必要で、実践的な問題解決力が問われることから、中級レベルに分類されます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | Google Cloud |
受験料 | $200 |
試験形式・時間 | オンライン/テストセンター、120分 |
受験要件 | なし(3年以上の実務経験推奨) |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 非公表 |
学習時間の目安 | 100-150時間 |
必要な前提知識 | ・クラウドの基礎知識 ・Python/Java ・SQL |
主な出題範囲 | ・データ処理システムの設計 ・ビッグデータ処理 ・MLパイプラインの構築 ・セキュリティと監視 |
出題形式 | ・選択式 ・シナリオベースのケーススタディ形式 |
実務での活用シーン | ・データパイプラインの構築 ・ビッグデータ基盤の設計 ・MLシステムの実装 |
企業での評価ポイント | ・実践的なデータエンジニアリング力 ・クラウドプラットフォームの専門知識 ・ビッグデータ処理の実装能力 |
公式サイト |
上級レベル
【上級レベル】では、専門家としての総合力を証明できる資格を紹介します。【上級レベル】では、専門家としての総合力を証明できる資格を紹介します。
データサイエンティスト検定
データサイエンスの実務能力を体系的に評価する資格です。理論的知識から実践力まで、データサイエンティストとして必要な総合的なスキルを証明します。実務でデータサイエンティストとして活躍したい方、キャリアアップを目指す方に適しています。
統計、機械学習、ビジネス活用など幅広い知識と実践力が必要で、実際の業務を想定した総合的な能力評価が行われることから、上級レベルに位置づけられます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | 一般社団法人データサイエンティスト協会 |
受験料 | 55,000円(税込) |
試験形式・時間 | CBT方式、記述式120分 |
受験要件 | なし |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 非公表 |
学習時間の目安 | 80~150時間程度 |
必要な前提知識 | ・統計学 ・プログラミングスキル ・ビジネス知識 |
主な出題範囲 | ・データサイエンスの基礎 ・分析手法 ・ビジネス活用 ・プロジェクトマネジメント |
出題形式 | CBT方式、選択式およびシナリオベース |
実務での活用シーン | ・データ分析プロジェクトの遂行 ・ビジネス課題の解決 ・分析結果の実装 |
企業での評価ポイント | ・実践的なデータサイエンススキル ・ビジネス活用力 ・プロジェクト遂行能 |
公式サイト |
学習時間の確保が難しい方へ
チームで協力し合いながら合格を目指すグループ学習サービス「CREW」。
データサイエンティスト検定を知り尽くしたプロが、あなたの学習を徹底的にサポートします。
AWS Certified Machine Learning - Specialty
AWSプラットフォーム上での機械学習ソリューションの設計、実装、デプロイ能力を証明する上級資格です。ビジネス課題に対して、適切な機械学習ソリューションを提案・実装できる能力を評価します。AWS環境での機械学習システム開発のスペシャリストを目指す方向けです。
実務経験が推奨され、AWS基盤の深い理解と機械学習の専門知識、実装力が必要とされることから、上級レベルに位置づけられます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | Amazon Web Services |
受験料 | $300 |
試験形式・時間 | オンライン/テストセンター、180分 |
受験要件 | 1-2年のML実務経験推奨 |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 720点以上/1000点満点 |
学習時間の目安 | 120-160時間 |
必要な前提知識 | ・AWS基礎知識 ・Python ・機械学習の実践経験 |
主な出題範囲 | ・データエンジニアリング ・EDA ・モデリング ・MLOps ・実装とオペレーション |
出題形式 | ・選択式 ・複数選択式 |
実務での活用シーン | ・MLシステムの設計/開発 ・本番環境への展開 ・大規模MLパイプラインの構築 |
企業での評価ポイント | ・実践的なML開発能力 ・クラウドでのML運用スキル ・エンタープライズレベルの即戦力性 |
公式サイト |
E資格
実践的なディープラーニングの知識と実装能力を証明する上級資格です。理論的な理解から実装まで、プロフェッショナルレベルのディープラーニングスキルを評価します。機械学習エンジニアやAI研究開発職を目指す方、より専門的なAI開発スキルを証明したい実務者向けの資格となっています。
筆記試験だけでなく実装試験があり、数学的な深い理解とPythonでの実装力が必要とされます。また、最新のディープラーニング手法の理解も求められることから、上級レベルに分類されます。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | 一般社団法人 日本ディープラーニング協会 |
受験料 | 44,000円(税込) |
試験形式・時間 | オンライン選択式試験、120分 |
受験要件 | 認定プログラム修了者(G検定合格者が望ましい) |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 非公表 |
学習時間の目安 | 200-300時間 |
必要な前提知識 | ・Python ・機械学習の基礎 ・数学(線形代数、確率統計、微積分) |
主な出題範囲 | ・深層学習の理論 ・フレームワークの使用 ・モデルの実装と評価 ・最適化手法 |
出題形式 | ・記述式 ・実装試験 |
実務での活用シーン | ・DLモデルの設計/実装 ・AIプロジェクトのリード ・研究開発 |
企業での評価ポイント | ・実践的なDL開発能力 ・最先端技術への理解 ・研究開発力 |
公式サイト |
統計検定1級/準1級
統計学の専門家としての高度な知識と応用力を証明する資格です。理論的な理解から実践的な応用まで、統計学の本質的な理解を評価します。統計学の専門家やデータサイエンスの研究開発職を目指す方に適しています。
大学で学ぶレベルの統計学の深い理解と、高度な数学力が必要とされます。専門的な統計理論と応用力が問われることから、上級レベルに位置づけられています。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | 一般財団法人 統計質保証推進協会 |
受験料 | 1級: 8,000円、準1級: 7,000円 |
試験形式・時間 | CBT方式、120分 |
受験要件 | なし(2級合格程度の知識推奨) |
合格率 | 1級: 約30% 準1級: 約35% |
合格ボーダー | 1級: 70点以上 準1級: 70点以上 |
学習時間の目安 | 300-400時間 |
必要な前提知識 | ・学部レベルの統計学<br>・数学(解析、線形代数) |
主な出題範囲 | ・数理統計学 ・多変量解析 ・時系列解析 ・ベイズ統計 |
出題形式 | 選択式(主にマークシート) |
実務での活用シーン | ・高度な統計解析 ・研究開発 ・統計コンサルティング |
企業での評価ポイント | ・専門的な統計知識 ・理論的な問題解決能力 ・研究開発能力 |
公式サイト |
Google Cloud Professional Machine Learning Engineer
Google Cloudプラットフォーム上での機械学習ソリューションの設計・実装・運用能力を証明する上級資格です。MLシステムの設計から本番環境での運用まで、包括的なスキルを評価します。GCP環境での機械学習システム開発のエキスパートを目指す方向けです。
実務経験が推奨され、GCP基盤の深い理解と機械学習の専門知識、システム設計力が必要とされることから、上級レベルに分類されています。
項目 | 内容 |
主催・認定組織 | Google Cloud |
受験料 | $200 |
試験形式・時間 | オンライン/テストセンター、120分 |
受験要件 | なし(3年以上の実務経験推奨) |
合格率 | 非公表 |
合格ボーダー | 非公表 |
学習時間の目安 | 120-180時間 |
必要な前提知識 | ・機械学習の実践経験 ・Python ・GCP基礎知識 |
主な出題範囲 | ・MLシステムの設計 ・モデル開発と最適化 ・MLOps ・モニタリングと運用 |
出題形式 | ・選択式 ・ケーススタディ |
実務での活用シーン | ・ML/AIシステムの設計開発 ・本番環境でのML運用 ・MLプロジェクトのリード |
企業での評価ポイント | ・実践的なML開発能力 ・プロダクション環境での運用スキル ・エンタープライズレベルの即戦力性 |
公式サイト |
自分に合った資格選びを
資格選びで重要なのは、自身のキャリアゴールと現在の立ち位置を見極めることです。「実務経験がない初心者」「基礎的なプログラミングスキルはある実務家」「より専門性の高いポジションを目指すエキスパート」など、状況に応じて最適な資格は異なります。
まずは自分のレベルに合った資格から始め、段階的にスキルアップを図っていくことをお勧めします。資格取得は、単なるスキルの証明だけでなく、体系的な学習を通じた実力向上の機会にもなるはずです。