アイデアソンとは?実践に役立つ基本フレームワークと効果的な進め方
- 将平 東
- 3月30日
- 読了時間: 9分
座学だけでは育たない“実践力”と“創造力”。
その両方を短期間で引き出し、組織横断のコラボレーションを促進する手法として注目されているのが「アイデアソン」です。
本記事では研修担当者が明日から実践できるよう、アイデアソンの基本構造(フレームワーク)と時間別の実施方法を、目的別に丁寧に解説します。
イノベーション文化の醸成に悩む研修担当者の方にとって、きっとヒントになるはずです。
アイデアソンの基本概念

アイデアソンの定義と特徴
アイデアソンとは「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた造語で、特定のテーマに対して短期集中でアイデアを創出するワークショップ形式のイベントです。
似たような言葉で「ハッカソン」がありますが、これは主にプログラミングなど技術的な実装までを含むのに対し、アイデアソンはアイデア創出に焦点を当てています。技術的スキルは不要で、様々なバックグラウンドを持つ参加者が集まり、多様な視点からの発想を促進する点が特徴です。
企業研修としてのアイデアソンが解決する課題
企業研修としてのアイデアソンは、従来の座学中心の研修とは異なり、参加者の主体性と創造性を引き出す場として機能します。実際のビジネス課題に取り組むことで、理論と実践の架け橋となり、学びの定着率を高めます。
また、部署を越えたコラボレーションの機会を提供し、組織のサイロ化を防ぎながらイノベーション文化の醸成に貢献します。短期間で具体的な成果物が生まれるため、研修効果の可視化も容易です。
アイデアソンで培われるビジネススキル
アイデアソンを通じて参加者は、創造的思考力、問題解決能力、チームコミュニケーション力など、現代のビジネスパーソンに不可欠なスキルを実践的に身につけることができます。
特に重要なのは、異なる意見や視点を尊重しながら建設的な議論を行う力や、制約条件の中で最適解を見つけ出す思考の柔軟性を養えることです。また、短時間でアイデアを形にする経験は、日常業務における意思決定の迅速化にも役立ちます。
効果的なアイデアソンを実施するための準備
適切なテーマと課題設定のポイント
効果的なアイデアソンの鍵は、適切なテーマと課題設定にあります。
テーマは、具体的でありながらも解決策の幅が広いものが望ましいでしょう。例えば、「売上を10%増加させる方法」よりも「若年層顧客の体験価値を高める新サービス」のような設定の方が創造性を引き出せます。
また、実際の業務課題と紐づけることで、参加者のモチベーションと成果の実用性が高まります。課題はシンプルな言葉で説明し、必要に応じて背景情報も提供しましょう。
必要な環境と道具の準備
アイデアソンの成功には、創造性を促進する環境づくりが重要です。
可動式の机と椅子を配置し、チーム活動がしやすい空間を確保しましょう。壁一面に使えるホワイトボードや大判の付箋、カラーペン、マーカーなどの文具は必須アイテムです。
また、タイムキーパー用のタイマーや、アイデア整理用のデジタルツールなども事前に準備しておくと良いでしょう。
参加者の事前準備とマインドセット
参加者には事前に、アイデアソンの目的とテーマ、当日のスケジュールを共有し、心構えを促しましょう。特に重要なのは「批判を控え、どんなアイデアも受け入れる」というマインドセットです。
また、可能であれば事前課題として市場調査や顧客インタビューなどのインプット情報を集めておくことも効果的です。こうすることで、参加者の専門性や役割を考慮してチーム編成することで、多様な視点を確保し、活発な議論が生まれやすくなります。
アイデアソンの進め方・フレームワーク
アイデアソンの基本的なフレームワーク
アイデアソンには、実施時間の長短を問わず共通する基本的な進行ステップがあります。以下の5ステップをベースに設計することで、目的に合った柔軟なプログラムが構築できます。

【1】テーマ理解(Understanding)
参加者全員が共通の課題意識を持てるように、テーマや背景情報をインプットします。課題設定の明確化が、質の高いアイデア創出に直結します。
【2】発散(Ideation)
自由な発想を促すフェーズ。ブレインストーミングやマンダラートなどの手法を用いて、固定観念にとらわれない多様なアイデアを出し合います。
【3】収束(Synthesis)
出されたアイデアをグルーピング・評価・選定し、核となるアイデアを絞り込みます。評価軸(実現性・独自性・インパクトなど)を明示すると効果的です。
【4】具現化(Prototyping)
選ばれたアイデアを、ストーリーボード・構想シート・簡易プロトタイプなどで「見える化」します。ビジュアルに落とし込むことで、具体性と説得力が高まります。
【5】共有・フィードバック(Sharing)
最終的にチームごとにアイデアをプレゼンし、参加者や関係者(経営層など)からフィードバックを受けます。他チームの視点を得ることで、学びが深まります。
アイデアソンの実施期間別の例
ここからは実施時間に応じたアイデアソンの実施例をご紹介します。
【A】半日(3〜4時間)
目的:短時間で発想力とチームワークを引き出すエントリーワークショップ
ポイント
テーマは日常業務に直結するものにし、参加者の当事者意識を高める
ブレスト中は「批判禁止」「質より量」で効率的に発想を引き出す
時間 | ステップ | 内容 |
0:00〜0:15 | オリエンテーション | 目的・テーマ・進行説明、チーム分け |
0:15〜0:45 | インプット共有 | テーマに関連する背景・事例・データを提示 |
0:45〜1:30 | アイデア出し①(発散) | ブレインストーミング/6-3-5法などで自由に発想 |
1:30〜2:15 | アイデア出し②(収束) | 類似アイデアをグルーピング・統合・選定 |
2:15〜3:00 | 発表とフィードバック | 各チーム発表、他チーム・ファシリからコメント |
3:00〜3:30 | ふりかえりとまとめ | 成果・学びの共有、次アクションの検討 |
【B】1日(6〜8時間)
目的:実践型の問題解決研修として機能する本格アイデアソン
ポイント
実務課題とリンクさせることで、成果物の活用可能性が高まる
簡易プロトタイピング(紙、スライド、動画等)を導入すると臨場感が出る
時間 | ステップ | 内容 |
0:00〜0:30 | オリエンテーション | テーマ・目的・進め方説明、チーム分け |
0:30〜1:00 | インプット共有 | 現状課題・事例共有、業界トレンドなど |
1:00〜2:30 | アイデア創出(発散・収束) | ブレスト→KJ法→選定(ユーザー視点で評価) |
2:30〜3:00 | ランチ&カジュアル交流 | 部署横断の関係構築にも活用 |
3:00〜4:30 | アイデア具現化 | アイデア構想→ストーリーボードやUX設計 |
4:30〜5:30 | 発表準備&プレゼン | 成果物を簡易スライドにまとめ、プレゼン練習含む |
5:30〜6:00 | 発表・フィードバック | 経営層またはメンターがコメント |
6:00〜6:30 | ふりかえり・評価・次アクション | 感想・学びの共有、社内展開の可能性検討 |
【C】1週間(4〜5営業日)
目的:イノベーション創出に向けた実践的な課題解決型プロジェクト研修
ポイント
実際に外部ユーザーや顧客の声を取り入れることで、リアリティが増す
経営層がDay5に出席することで、成果発表への緊張感とモチベーションが上がる
チームごとにメンターを配置することで学びを最大化
日程 | ステップ | 内容 |
Day 1(3時間) | キックオフ | テーマ共有、チーム結成、課題の深掘り |
Day 2(終日) | インサイト探索・アイデア創出 | ユーザー調査、観察、ブレスト、仮説構築 |
Day 3(終日) | コンセプト設計 | アイデア統合、ペルソナ作成、価値提案検討 |
Day 4(終日) | プロトタイピング | サービスモデル構築、ビジュアル化、検証計画 |
Day 5(終日) | プレゼン・フィードバック | 発表会+経営層レビュー、今後のアクション検討 |
研修でアイデアソンを導入することのメリット
従来型研修よりも学習定着率が高い
従来型の座学中心研修では、学習内容の定着率が低いことが大きな課題です。研究によれば、講義形式での学習内容は24時間後には約70%が忘れられてしまうという報告もあります。また、実際の業務課題と研修内容の乖離も、学びを実践に活かせない原因となっています。
一方、アイデアソンは「体験」を通じた学びであり、実際のビジネス課題に取り組むことで、理論と実践を結びつけた深い理解が促進されます。能動的な参加と感情の動きを伴うため、学習内容の定着率も大幅に向上します。
チーム学習がもたらす相乗効果と規律性
個人学習だけでは得られない「多様な視点の共有」や「相互フィードバック」がチーム学習の強みです。
アイデアソンでは、異なる部署や経験を持つメンバーが協働することで、単独では思いつかなかったアイデアや解決策が生まれます。
また、チームでの約束ごとや締切りが「適度な緊張感」を生み、個人学習では陥りがちな先延ばしを防ぎます。さらに、メンバー同士で学びを言語化して共有する過程で理解が深まり、互いの強みを活かした役割分担により、効率的な問題解決が可能になります。
実践的スキル習得とイノベーション文化の醸成
アイデアソンの最大の強みは、創造的思考力やコラボレーション能力など、座学だけでは身につきにくい実践的スキルを養える点です。
特に「批判を控え、アイデアを発展させる」という姿勢や、「失敗を恐れず試行錯誤する」精神は、日常業務でも活きる貴重な経験となります。
また、部門を越えた協働の経験は、組織内のサイロ化を防ぎ、オープンなコミュニケーション文化の基盤となります。経営層が求める「イノベーション文化の醸成」には、このような実践を通じた体験学習が不可欠であり、アイデアソンはその有効な手段となります。
“成果につなげる”チーム学習型プログラム:CREW

アイデアソンをきっかけに、実践力や創造性を引き出す研修に可能性を感じた方へ。
その効果をさらに継続的なスキル育成へとつなげたいとお考えであれば、CREWのチーム型学習プログラムをご活用ください。
CREWでは、4〜5名の受講生と専属コーチによるチーム体制を採用。 チームで毎日進捗を共有し、相互にフィードバックし合う仕組みにより、個人任せの学習に比べて高い定着率と学習完遂率を実現しています。
さらに、生成AIを活用した個別最適化学習やアウトプット重視のカリキュラムにより、ビジネスに即した“使える力”を効率的に育成可能です。
CREWの特徴(一部抜粋)
✔️ チーム単位で学び合い、毎日継続しやすい学習習慣が身につく
✔️ 生成AIでの自動フィードバック&質問対応で効率的な学びをサポート
✔️ 毎日専属コーチが伴走し、学習のつまずきを早期に解消
✔️ DX・生成AI・企画・語学など幅広いテーマに対応
まとめ
アイデアソンは、単なるアイデア出しの場ではなく、実践的な学びと部署を越えた協働を促進する、企業研修における有効な手法です。
座学では得られない体験を通じて、参加者の創造力・問題解決力・チーム力を引き出すことができます。
本記事でご紹介した基本フレームワークや時間別の進め方を参考に、ぜひ自社の目的に合ったスタイルで導入してみてください。