「PMP試験の勉強を始めたけど、なかなか受かる気がしない...」 そんな不安を抱えていませんか?
実は、プロジェクトマネジメントの実務経験が豊富な方でも、PMP試験では思うように点数が伸びないことがよくあります。
本記事では、PMP試験でよくある失敗パターンと、残り時間に応じた効果的な学習方法をご紹介します。実践的なアドバイスを参考に、合格への道筋を立ててみましょう。
PMP試験の勉強法でありがちな失敗
「実務経験があって勉強もしているのに模試や過去問で手応えを感じられない」というケースは、実はよくあることです。
特に、プロジェクトマネジメントの経験が長い人ほど、かえって苦戦してしまうケースも。その理由を、3つの失敗パターンから見ていきましょう。
失敗パターン①:実務経験を過信した勉強法
「実務でプロジェクトマネジメントをやっているんだから、理論は後回しでいいや」
これは、最も危険な考え方です。確かにプロジェクト経験は大切ですが、PMPではPMBOKという特定のフレームワークに基づいて問題が作られています。
したがって、実務では上手くいっている方法でも、PMBOKの観点では必ずしも正解とは限りません。
例として、「ステークホルダーとのコミュニケーション方法」というテーマで考えてみましょう。
実務での一般的な対応
必要に応じたアドホックなコミュニケーション
重要度の高いステークホルダーを重点的に管理
メールや口頭での情報共有が中心
関係性や過去の経緯を重視した対応
社内の慣習に従ったコミュニケーション
PMBOKで推奨されるアプローチ
ステークホルダー特定
権限と影響力のマッピング
関心度分析
ステークホルダー分析
期待事項の文書化
影響力/関心グリッドの作成
エンゲージメント計画の作成
コミュニケーション要件の定義
情報配布の方法と頻度の設定
エンゲージメントの管理
定期的な評価と調整
フィードバックの収集と対応
上記のように、実務の経験とPMBOKで推奨されるアプローチは大きく異なります。「実務ならこうする」という思い込みを排除し、PMBOKのプロセスに則った選択肢を探すことで、経験者特有の落とし穴を避けることができます。
失敗パターン②:参考書の勉強効率が悪い
「とりあえず参考書を最初から読んでいけば大丈夫だろう」
PMPの参考書や問題集は500ページを超えるものがほとんどなので、膨大な量を最初から順番に読んでいくのは効率が悪いです。
特に、以下のような状態になりがちです。
重要度の低い箇所にも同じ時間をかけてしまう
出題頻度の低い「契約管理」に、出題頻度の高い「スコープ管理」と同じ時間をかけた結果、試験で配点の高い箇所の学習時間が不足してしまう。
知識の関連性が見えづらい
「品質管理」と「リスク管理」の関連性を理解できないまま進んでしまった結果、応用問題で正しい判断ができない
下記の観点を意識して、限られた時間で効率的に学習することを目指しましょう。
まず全体像を把握する
プロセス群(立ち上げ→計画→実行→監視コントロール→終結)の流れを理解する
10の知識エリアの相関関係を図解で把握する
学習の優先順位をつける
理解しやすい分野を先に学習する
出題頻度の高い分野から着手する
スコープ管理(約15%)
スケジュール管理(約12%)
品質管理(約12%)
反復学習を取り入れる
1周目:概要把握
2周目:重要ポイントの理解
3周目:応用力の習得
失敗パターン③:理解より暗記に走りがち
「ITTOを丸暗記すれば何とかなるはず...」
※ITTO(アイティーティーオー)とは: Input(インプット)、Tools & Techniques(ツールと技法)、Output(アウトプット)の略で、PMBOKの各プロセスで必要な入力物、使用するツールや技法、そして生み出される成果物のこと。
確かに暗記は重要ですが、PMPの問題は単純な知識の確認が問われる試験ではないですし、そもそも膨大なITTOを丸暗記するのは非現実的です。
実際の例題を見てみましょう。
状況判断が必要な応用問題
あなたはプロジェクトマネージャーとして、重要な外部ステークホルダーから突然の仕様変更要求を受けました。チームメンバーからは「技術的に実現可能」との報告がありますが、スケジュールへの影響が懸念されます。次にとるべき最適なアクションは?
この場合、単にITTOを暗記していても正解にたどり着けません。以下を総合的に判断する必要があるでしょう。
変更管理プロセスの手順
ステークホルダーの重要度
スケジュールマネジメント計画
チームのケイパビリティ
プロセスの流れを理解していないと解けない問題
プロジェクト計画段階で、あるリスクの定量分析を行いました。分析の結果、プロジェクトの目標達成に重大な影響を与える可能性が判明しました。次に実施すべきことは?
この場合、以下のプロセスの流れを理解していることが重要です。
リスクの特定
定性的リスク分析
定量的リスク分析
リスク対応計画の作成
リスク対応の実行
リスクの監視
より効果的な学習のためには、ITTOを単純に暗記するのではなく、それぞれの要素がなぜ必要で、どのように活用されるのかを理解することが非常に重要です。 これにより、実際の試験で問われる「判断力」を身につけることができます。
PMP試験は英語ができないと不利ってホント?
PMPは日本語で受験することもできますが、ここでよく話題になるのが、PMP試験の日本語訳が読みづらいということ。
PMPは英語の試験なので、その他の言語は原文を直訳する形で提示されますが、原文の英語表現を忠実に日本語に置き換える傾向があるため、専門用語が分からなかったり、文章の意図が汲みづらい場面もしばしば。中には「英語ができないと解けないのでは?」と不安になる方もいらっしゃるのですが、結論から言えば、英語ができなくても問題はありません。
実際、ここ数年で日本語翻訳の精度は大幅に向上しています。以前のような極端に不自然な表現は減り、理解しやすい日本語訳も増えてきました。とはいえ、「スケジュールのコントロール」「妥当性確認済み成果物」のように、そのままでは意図が掴みづらい専門用語は依然として存在します。
ここで重要なのは、頻出の専門用語をしっかりと理解しておくことです。例えば「漸進的詳細化」は「プロジェクトの進行に合わせて徐々に計画の詳細を固めていく」という考え方であり、「ベースライン」は「比較の基準となる計画値」を指します。このように、一つひとつの用語の本質的な意味を理解していれば、多少表現が直訳的でも問題を解くことは十分可能です。
そのため、英語学習に時間を費やすよりも、PMBOKの概念や専門用語の理解に注力することをお勧めします。試験中に日本語の意味が掴みにくい場合は、英語表示に切り替えて確認することもできますが、これはあくまで補助的な手段として活用すれば十分です。
PMP試験の残り時間別対策プラン
今何を勉強すればいいのか?は多くの受験者が抱える不安です。ここでは、残り時間別の具体的な学習プランをご提案します。
3ヶ月以上ある場合:基礎固めから始めよう
まずは全体像の把握からスタートし、じっくりと土台を築いていきましょう。
1ヶ月目は、PMBOKの基礎概念の理解に時間をかけます。特に出題頻度の高い「スコープ管理」「スケジュール管理」「コスト管理」を重点的に学習します。この時期は暗記に走らず、なぜそうするのかという「理由」を理解することを心がけましょう。
2ヶ月目からは、問題演習を中心に実践力を養います。毎日30問程度を目安に、苦手分野を重点的に解いていきます。この時期のポイントは、間違えた問題の解説をしっかり読み込み、似たような問題に出会った時の対処法を考えることです。
2ヶ月〜1ヶ月ある場合:効率重視の学習を
2ヶ月〜1ヶ月であれば全体的に得点を底上げすることが十分可能ですが、効率的な学習が必要不可欠です。
まずは模擬試験を受けて現在の実力を把握し、弱点を明確にします。その上で、出題頻度の高い分野から優先的に学習を進めましょう。 この時期は深い理解よりも、試験で必要な知識の習得を優先したほうが賢明です。毎日50問程度の問題演習をこなし、解説を読んで知識を定着させます。
週末は4時間程度のまとまった時間を確保し、分野別の総復習を行います。特に、プロセス群の流れと知識エリア間の関連性は、重点的に確認しておきましょう。
2週間を切っている場合:頻出分野を集中的に
2週間という短期間では、全範囲を完璧に押さえることは現実的ではありません。そのため、確実に点を取れる分野を絞り込む戦略が重要です。
1週目は、出題頻度の高い3つの分野(スコープ、スケジュール、コスト)に絞って集中的に学習します。毎日100問程度の問題演習を行い、同じような問題のパターンを把握することを意識しましょう。
最後の1週間は、本番を想定した模擬試験を中心に、実践的な演習を行います。この時期は新しい分野の学習は避け、既に学習した内容の復習と、時間配分の感覚をつかむことに注力するのがおすすめです。
まとめ
PMP試験の合格に近道はありませんが、効率的な学習方法は確実に存在します。
まずは自分の学習スタイルの問題点を把握し、残り時間に合わせた現実的な計画を立てることが重要です。また、実務経験を活かしつつも、PMBOKの理論をしっかりと理解することで、応用問題にも対応できる力が身につきます。
地道な努力は必ず報われます。焦らず、着実に、自分のペースで学習を進めていきましょう。